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伊勢器市さんに行って来ました。その壱


 先日(6月4日)、日頃からお世話になっている伊勢器市(いせうつわいち)(三重県伊勢市)さんに納品に行ってまいりました。オープンして10年も経過しておりませんが、藤山窯は開店時からお世話になっております。近年は藤山の作風が変化してきたため、1年ほど前に一旦商品をリセットし、新しい作品を展示して頂くお願いをしました。

 今回のご訪問の機会に、器市さんをはじめ、神都・伊勢の見どころを一部ですがご紹介させて頂きます。


江戸時代末期のお伊勢参りの様子を描いた浮世絵

 江戸時代から「一生に一度はお伊勢参り」と言われ、四国の「こんぴら参り」と並んで、伊勢神宮への参詣は人々の憧れでありました。今日も、初詣の1月を筆頭に、年間800万人が訪れているそうです。毎年、内閣総理大臣も年始の参拝をされますよね。

 

 伊勢神宮には「内宮(ないくう)」と「外宮(げくう)」があるのをご存知でしょうか。内宮には日本人の総氏神とされる「天照大神(あまてらすおおみかみ)」が、外宮には衣食住の神である「豊受大神(とようけおおかみ)」が祀られており、ご鎮座されている神様が違います。この他にも、伊勢市近辺には別宮や摂社・末社などが125社存在します。伊勢神宮とは、内外両宮とこれらすべての宮社の総称であり、正式には単に「神宮」と呼びます。


 JR・近鉄伊勢市駅

外宮へ続く参道の入り口


 今回訪れました伊勢器市さんは、外宮の参道沿いにお店を構えていらっしゃいます。住所の伊勢市本町1-1が示すように、一丁目一番地、正に伊勢の一等地に所在します。伊勢市駅で下車して、鳥居をくぐり、信号を渡ったすぐ右手にあります。

 器市の経営者さんは、「伊勢神泉」というホテルを中心に、その他カフェ、お土産店、食堂なども経営されております。

参道に入って、一番最初に出会うお店がそうです。

全体の外観です。店舗の裏に見える高い建物がホテルです。


伊勢神泉(ホテル)


 

参道TERRACE

(カフェ&スイーツ)

 

先を急ぐので、コーヒー一杯だけ頂きました。

五豊美(お土産・きき酒)

 

三重県の名産品を買うことができます。

あこや真珠

伊勢和紙


松阪木綿

日永うちわ


ここではお酒の購入はもちろん、きき酒もできます。

 全国的に有名な、「而今(じこん)」、「作(ざく)」をはじめ、銘酒も多い三重の地酒。

 まだ記憶に新しいと思いますが、2016年の安倍元首相の時代に、伊勢志摩サミット(G7先進国首脳会議)が開催されました。「作」は乾杯酒に選ばれたこともあり、爆発的な人気になりました。サミット会場は、同じ志摩半島の反対側に位置する、英虞湾に浮かぶ「賢島」の志摩観光ホテルさんでした。



 

私もお土産に「作 雅乃智 中取り」を買いました。

桝はつい衝動買いしてしまいました。

帰宅後にさっそく頂きましたが、華やかな香りのエレガントなお酒でした。


伊勢器市さんはこのエリアの一画にあります。

 前述のように、外宮には食べ物の神様「豊受大神」が祀られおります。この外宮の門前町において、食事に間接的に関わる焼き物(食器)を販売し、お客様の食生活に彩を与えるいうコンセプトのもと、器市さんが誕生したのだと思います。

 1年前に前任の方が、「全国からお伊勢参りにいらした観光客に、東海地方にはこんなに素晴らしい焼き物の産地と、焼き物があることを伝えたい。お客様と窯元を繋げる役になりたい」とも仰っておりました。

 東海地方にある主な産地は、藤山も窯を構える岐阜県の美濃、地元三重県の四日市、伊賀、愛知県の瀬戸、常滑、また東海には分類されませんが三重の隣県である滋賀県の信楽です。このうち瀬戸、常滑、信楽は六古窯に数えられます。残る3つは、丹波、備前、越前ですね。


産地ごとにブースが設けられ、焼き物が展示されておりました。

信楽の古谷製陶所さん。

藤山の主力製品でもある「粉引」が有名です。


美濃焼コーナーに、見慣れた藤山の器が展示されておりました。

近所の窯元、宗山窯さんです。陶器に漆を塗った「漆陶」で有名です。

隣町多治見市の幸兵衛窯さんです。

江戸時代創業の名門です。


 写真右の焼き物を「志野(しの)」と呼びます。織部、黄瀬戸、瀬戸黒と並んで、美濃焼を代表する焼き物の一つです。

 「この志野いいなあ」と手に取って裏の製造元を見たら、昨年たまたま知り合った多治見市の虎渓窯さんの作品でした。左隣りは藤山の飯碗(U・ブルー)ですが、伊勢の地で隣に並べて頂いているとは。人生どこでどんなふうに繋がっているか分かりません。頂いた良き縁に感謝です。


ホテルのお客さんなのでしょう。お風呂上りに散策にいらっしゃったようです。

実に優雅です。


 窯業に従事する我々は恐れ多くも、また光栄にも、「衣・食・住」の「食」に携わる仕事をさせて頂いていると時々思い出します。伊勢器市さんを訪ねて、「食べ物の神様の前に手抜きで作ったような器は並べられない」と気が引き締まりました。人間にとって、さらに言えば生き物にとって食事は生命を維持するためにも大切な営みです。家族とコミュニケーションをとったり、大切な商談をしたり、仲間と騒いだり語り合ったりする時間でもあるでしょう。お客様のそんな大切な時間を、藤山の器が豊かなものにすることができたらと願っております。今後も良い器を作るよう精進いたします。

 伊勢器市さん、末永く今後ともよろしくお願い致します。